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大学院国際開発研究科(博士課程後期)について

臼井 功

筆者は今年度,大学院国際開発研究科(博士課程後期)から附属図書館図書館資料選定小委員会委員に選出された。同委員会に初めて出席したとき,同研究科への教養教青図書予算の配分についての議論があった。同研究科には教養教育を受けるべき学生はいないにもかかわらず,そのような図書予算の配分を受ける理由が筆者自身にも不明だったので,その趣旨を尋ねたところ,現在教養教育を受けている学生の中で将来同研究科に進学したいと思っている学生が読むべき図書館資料のための予算であると説明され,納得した。そこで小文においてもこの理由に倣って,そのような学生のために(そして筆者としてはそのような学生が増えることを願って),同研究科を紹介することを許していただきたい。

国際開発研究科は,本学の経済学,経宮学,法学の社会科学系3分野の教官が協力して,国際開発活動の担い手たりうる高度の専門性を備えた人材を育成するとともに,国際開発に関する新しい学術研究を推進することを目的として設立された独立大学院である。その設立の趣旨をより詳しく述べると次のようになろう:いま世界は,開発と環境,貧困,民族自立と統合など国際的視野から解決を迫られる課題が山積しており,有数の途上国援助国になった日本に寄せられる期待は大きい。しかしその日本においては,企業活動の国際化や経済のグローバル化が著しく進展しているにもかかわらず,国際開発に関して高度の専門知識を有し,リーダーとして活躍できる人材が不足しているので,そのような人材を育成することが急務になっている。国際開発研究科はかかる人材の育成とともに,彼らが身につけるべき開発理論の創造をめざして設立されたのである。

次に国際開発研究科の構成について述べよう。同研究科は企業活動という視点から国際開発を取り上げる国際開発専攻と,政府や国際機関の開発計画や経済政策を対象とする国際開発専攻との2専攻からなり,さらに前者は国際開発経宮大講座と開発活動評価大講座をもち,後者は国際開発政策大講座と比較地域発展大講座をもっている。各大講座の内容を述べると次のようになる。

国際開発研究科修了者の進路としては,民問部門の専門実務家,シンクタンク,政府開発援助の公的実施機関,地域開発銀行などが想定されている。

本学の国際開発研究科と類似の国立大学大学院研究科には,専攻名まで述べると,博士課程後期が(も)設置されているものとして,名古屋大学大学院国際開発研究科の国際開発専攻および国際協力専攻,広島大学大学院国際協力研究科の開発科学専攻がある。本学の上記研究科を含めたこれら3研究科は,いずれもここ1〜2年の中に設置されたものであり,地理的に言うと,東日本,中部日本,西日本にそれぞれ1研究科ずつ配置されていることになる。なお,修士課程のみの研究科(専攻)として,名古屋大学大学院国際開発研究科の国際コミュニケーション専攻,神戸大学大学院国際協力研究科の国際開発政策専攻,国際協力政策専攻,地域協力政策専攻がある。

さて本学の情報処理センターは平成5年度に総合情報処理センターに昇格した。これにともなって,附属図書館も総合情報処理センターと学内LAN(シグマネット)を通じて結ばれるようになり,総合情報処理センターにシグマネットと学部内サブLAN(イーサネット)を通じてアクセスできる学内のパソコン,ワープロなどは(総合情報処理センターにアクセスできないものは電話回線経由で),附属図書館に所蔵されている書誌についての情報(所蔵されているか否か,所蔵されている場合の分類番号,所蔵場所など)にアクセスできるようになった。この書誌情報検索システムはOPAC-PCと呼ばれている。笑は,このシステムの(ハード面の)完成については筆者は少しばかりの感慨がある。というのは,筆者の所属する経宮学部ではイーサネットは,昭和62年に電子計算機センターが情報処理センターに改組された際に敷設されたのであるが,その提案者は経宮学部電子計算機室長だった筆者であり,その提案理由の一つが附属図書館や文部省学術情報センターの書誌情報に各教1官の研究室からもアクセスできるようになるということだったからである。

OPAC-PCで検索できる書誌は附属図書館所蔵書誌100万冊の中の2割と聞く。この割合を格段に上げることが必要であろうが,それには限界がある。要は読みたい文献がすぐに説めることであるので,文部省学術情報センターの充実と,本学の附属図書館と総合情報処理センターの連携の強化などが望まれるところである。

〈国際開発研究科教授 うすい いさお〉


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