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1996・97年近隣大学図書館見学記

関口 欣也

 1996年春、私が附属図書館長に就任して間もなく知ったのは、本学の附属図書館が神奈川県下の各大学図書館や公共図書館と連携して図書館活動をしていることであった。連携の基礎は相互認識と友好であるから、そのためと、広く先例を参考にするために近隣17図書館を見学した。初年度は神奈川県下の公私立大学図書館9館、次年度は県下の私立大学図書館4館と東京都下の私立大学図書館3館および横浜市中央図書館であった。

 これら各図書館は伝統と革新により、それぞれ著しい特色があり、それを紹介するため、本稿は大学別に記した。但し、蔵書検索のOPAC、高度情報通信のインターネット等の電子図書館化はどこの大学図書館でも盛んに整備中で変化の過程にあり、例えば慶應義塾大学湘南藤沢メディアセンターはワークステーション 200台といい、OPAC・CD−ROM等のパソコン端末もカラーに替わっている。そのため、ここでは特記事項を除き、電子化関係の記事を省略した。記述は概ね蔵書数、環境、建物と閲覧室の特色の順とするが、事務空間をよく見る余裕はなかった。見学は館長と館員1〜3人で行ない、前半で概要を聞取り、後半で図書館主要部を見学したが、時間は2時間程である。各大学とも快く当方の見学に応じて下さり、厚く感謝の意を表したい。以下、訪問順に概略を記す。

  1. 慶應義塾大学湘南藤沢メディアセンター 96年6月。19万冊。藤沢北部のゆるい丘陵地にある。RC、B1・3Fで、表の中庭側に階段室の大きなガラス面がある(設計:槇文彦)。著しい特色は情報処理センターと図書館が一体化し、1階では多数のワークステーションがあって活発な情報リテラシィ教育が行われ、2階以上が開架閲覧室になる。
  2. 東海大学附属図書館中央図書館 96年7月。108万冊。平塚北部のゆるい南斜面の丘にたち、同じ構内に3分館がある。大学本部と共存し、機能的に不便な点があるという。RCでも軒が深く、ガラス面が白亜の柱筋より後退し、閲覧室の内部は天井が空を切る(設計:山田守)。開架式を主とするが、貴重書書庫には内外の古書が蔵され、そのうち重要なものが日本・西洋に分けて都下で公開された。
  3. 関東学院大学図書館 96年7月。50万冊。六浦の入江に面したキャンパスにあるが、狭隘等のため将来は釜利谷に新図書館建設の計画という。RC3Fの建物は3階が少し大きい。内部は4本の太い丸柱がたち、1階の一方が竹林に面した閲覧室、3階が書庫である。コレクションに40ケ国聖書がある。
  4. 慶應義塾大学日吉メディアセンター 96年10月。60万冊。多摩丘陵の広いキャンパスの入口近くにある。図書館は少し離れた所にある計算室と組織が合体し、後者で情報リテラシィ教育が行われている。RC、B1・4Fの図書館(設計:槇文彦)は開架式で、機能的である。また同大学全体の施設として山中湖畔に50万冊の保存図書館(将来的には全4棟)がある。
  5. 横浜市立大学図書館 96年10月。56万冊。東京湾に近い瀬戸の平地の山際にある。旧図書館の隣りにあり、初め大形の予定だったが、市財政との関係で縮小し、近い将来、旧館の一部をとりこむという。現状はSRC、B2・4Fの規模で(設計:日建設計)、地階は主に書庫(地下2階は集密)で1・2・4階にもかなりの開架書庫があり、4階は経済研究所。本格的な貴重書書庫がある。
  6. 神奈川大学図書館 96年12月。68万冊。ヨーロッパの都市大学のように街区の一画をなしている。地下2階閉架書庫(60万冊収容可能)、地下1階玄関・閲覧室・視聴覚ホール等、1〜3階閲覧室等。2階床に入込み状の吹抜があり、閲覧室に変化を与える。1階外部の縦長窓には固定ルーバーが突出し、外部は褐色のスクラッチ・タイル仕上げである。また同大学には扇形平面の平塚図書館(8万冊)がある。
  7. 鶴見大学図書館 97年1月。50万冊。キャンパスの地形との関係から斜面に建設され、建物後方の一部が地盤にもぐりこみ、玄関へは階段で上る。メインカウンターのある1階エントランスホール上部の吹抜が印象的である(設計:日建設計)。地下1・2階が閉架書庫、1・2階が開架閲覧室、3階が事務室と貴重書書庫等である。計画に当り、効率のよい機能と利用者の動線が重んぜられた。
  8. 日本女子大学西生田図書館 97年1月。7万冊(17.5万冊収容可能)。多摩丘陵の長い谷戸にあり、雑木林の環境が素晴しい。図書館はこじんまりし、研究棟と連棟する。B1・3Fで、地下1階一部の集密書架に洋雑誌をおく。平面は鍵形で、屈折点に眺望のよい閲覧室が突出する。目白の日本女子大学図書館(45万冊)と相互利用できる。
  9. 専修大学図書館生田本館 97年2月。73万冊。多摩丘陵の丘の上にあり、昭和43年に30万冊収蔵で出発した現在の建物が古くなり、神田分館(31万冊)の蔵書も考慮して 160万冊収蔵可能の新図書館(B4・3F、設計:山下設計)を建設中。マイクロフィルム6万リールを所蔵し、リーダーが完備されている。またよく整理されたフランス革命期文献のコレクションは圧巻である。
  10. 北里大学医学図書館 97年5月。13万冊。相模大野の近くにある。医学部第2研究棟2階にあり、雑誌閲覧が主である。南側を閲覧室と事務室、北側を雑誌バックナンバーと新着雑誌とする。また中2階の一部に集密書架、3階の一部に視聴覚学習室がある。他大学からの文献複写依頼が多い(1.2 万件)。
  11. 相模女子大学附属図書館 97年6月。26万冊。相模大野に近いほぼ方形のキャンパスの奥の方にあり、3F。1階の庇やガラス・ブロック、3階のセットバックなどにより外観に変化がある(設計:香山アトリエ)。1階は入口ホール・開架閲覧室・事務室、2階は開架閲覧室・集密書庫等、3階は視聴覚室等である。入口カウンター廻りは寛ぎがある。
  12. フェリス女学院大学附属図書館緑園図書館97年6月。8万冊。相鉄線緑園都市の近くにある国際交流学部の図書館。大講義室を改造したもので2F。1・2階とも外部が弧状の扇形閲覧室を中心とし、2階閲覧室は広闊である。また1階に集密書庫がある。また同大学には横浜市山手に山手図書館(12万冊)、同別館(3万冊、楽譜多数)がある。
  13. 明治大学図書館生田分館 97年7月。30万冊。生田の台地上にあり、理工学部と農学部が対象。2F一部B2。特筆に値するのは図書館南庭地下の明治大学全学保存書庫(65万冊収容可能、全電動集密書庫)で、分館とつながり、地上は芝生である。なお駿河台の明治大学図書館( 113万冊)は23F超高層の新校舎が完成すると、その地下1〜3階に移る。もちろん相互利用が行われ、毎日連絡便がある。
  14. 横浜市中央図書館 97年9月。97万冊。野毛の緩傾斜地にある。6角形を化学式のように連結して核に小さな光庭を設けた独特の形態(設計:前川設計事務所)。地下1〜3階は書庫等、1〜5階は各門閲覧室・事務室等である。外観は茶色の壁面と腰の黒ガラス。全市各図書館の検索と利用ができ、移動図書館事業が行われ、蔵書能力は 150万冊。
  15. 早稲田大学総合学術情報センター 97年10月。185万冊。大学創立 100周年事業としてキャンパス東北に平成3年に開館した。南西側の平面三角形の中央図書館と東北の国際会議場をブリッヂでつなぎ、その中央に時計塔がたち、スクラッチ・タイル仕上げ(設計:日建設計)。B3・4Fからなり、 400万冊以上を収容できる。内部はゆったりし、色調もよい。中央図書館・5大分館・部局35図書室を総合した 315万冊の書誌情報を一元化している。重複図書を積極的に活用して、外国の大学図書館等と活発に交流している。
  16. 慶應義塾大学三田メディアセンター 97年11月。 192万冊。東京湾沿いの低地・田町に臨む台地にある。図書館と計算室を統合して組織され、B2・5Fからなる重文の明治末旧館(書庫・会議室)とB5・6Fの新館(設計:槇文彦)からなり、後者の閲覧室は天井が高く、シャンデリアが吊ってある。図書管理に斬新な手法を用い、例えば教員購入の20万円以上の本を特別図書とする。またOPACは98%完了している。海外交流も活発で、相互平等による職員派遣も進んでいる。なお慶應義塾大学全体の蔵書は約 325万冊。
  17. 国際基督教大学図書館 97年11月。50万冊。武蔵野の林と大木に恵まれたキャンパスにある。環境との調和を考えて図書館は低層で、オープン・カット式に地盤を凹め、これを地下とみればB1・2Fである。戦後の復興建築に活躍したA・レーモンド氏の設計で、白壁と水平ルーバーが印象的であり、閲覧室は武蔵野の林が窓一杯である。すべて開架閲覧室で、内村鑑三記念文庫がある。また6年任期の専任館長制である。なお、いま南側に新館増築検討中である。また蔵書増加を貸倉庫で解決している。

<附属図書館長・工学部教授 せきぐち きんや>


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