附属図書館トップ図書館紹介図書館報図書館報総目次



自己点検は「図書館の悲鳴」か

杉 尾 勝 茂

横浜国立大学の将来構想21世紀の横浜国立大学像という小冊子がある。平成2年に作成され,本学の改革の指針としてきたものである。目標に対する課題の多くは達成されたとの評価である。ただ残念なことは附属図書館の将来構想が打ち出されていないことである。

この横浜国立大学の将来構想は5年ごとに評価し,新たな検討がおこなわれる。本年がその見直しの年にあたる。

小冊子“はじめに”に記述された,本学の進むベき方向について (1)「大学の国際化」を促進する (2)高度情報化に対応した教育・研究機能の多様化,高度化を図る (3)新たな「開かれた大学」の創造,を構想としてまとめられている。これらを指向する基本的視点,また改革の持続性の確保から,ここ当面はなお継承されるであろう。

今日の大学図書館におけるキーワードは,情報化国際化,生涯学習社会に対応した開かれた大学図書館であり,上述の三つの視点に集約されていることを考慮するならば,本学附属図書館の構想をこの視点からその在り方を展望することは極めて重要な課題となっている。

大学図書館の在り方について,これまで各種の指針がだされた。

学術審議会から「今後における学術情報システムの在り方について」(答申)1980,「学術情報流通の拡大方策について」(報告)1990,「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」(答申)1992,がこれである。各大学図書館は,これらの指針をもとに自館の機能強化に努力してきたところであるが,本年2月,上記「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」のなかに記述された「大学図学術審議会総会で,同学術情報部会から「大学図書館の強化・高度化の推進について」の報告がなされた。これらの指針と,横浜国立大学の将来構想21世紀の横浜国立大学像の三つの視点から本学図書館の当面する課題を整理する。


「高度情報化」に対応する視点

本学における学術情報の流通システムの整備・推進と,本学図書館が学内外情報の効果的な利用の拠点として,学内LANを利用した情報提供サービスの拡大。

1)オンライン目録所在情報(OPAC)の提供

  • 蔵書100万冊の目録所在情報データベースの拡充
  • 2)CDサーバーシステムの導入によるCDーROMデータベースの提供

    3)画像データベースシステムの研究と推進

  • 学術雑誌目次速報データベースの事業化を期に本学紀要の電子化
  • シャウプ.コレクション文書類の電子化
  • 4)UNIX対応の図書館システムの構築


    「大学の国際化」に対応する視点

    留学生受入れ10万人計画における本学の推移をみると,平成6年5月1日現在460人で,昨年同月比ll.4%増となっている。本学の留学生受入数は大学の規模,学生定員数比でも全国的に高い水準にあり,なお増員が予想される。これら,留学生受入れ政策に関わる本学図書館の対応。

    1)本学留学生センター活動における図書館の補完機能の整備

  • 夜問閲館,土曜間館利用を促進させるための資料及び施設設備の整備
  • 2)留学生用利用案内(英文等)の作成


    「開かれた大学」図書館に対応する視点

    大学における生涯学習活動の支援が要請されるなかで本学図書館の新たな機能の整備。

    1)「大学ホール」運営計画と図書館の連携活動

    2)土曜開館を積極的に推進させるための施設設備の整備

    3)休日開館の要員確保

    4)オンライン目録所在情報(OPAC)の一般公開

    その他総合的な課題として,新しい図書館を展望する視点で中央館3号館建築と既設館との総合的な利用計画の策定,また日常の図書館運営の改善など各種課題がある。

    本学の進むべき方向と理念を基礎に図書館の自己点検・評価が重要となる。すでに昨年度「横浜国立大学附属図書館の現状と課題」として公表した。この報告書の検討委員会での意見交換のなかで,ある委員から,この報告書を読むと「図書館の悲鳴」が聞こえてくるといわれた。この悲鳴の意味するものは何であろうか。図書館が教育・研究の支援機関としてその機能を果たし得ないことからくる悲鳴であり,とりもなおさず,研究者・利用者の悲鳴であり,大学の悲鳴ではないだろうか。

    これら課題の達成にはすべて,予算の措置が伴い図書館独自で手当しなければならないが,これらの事業費の手当てが困難な状況にある。先ほどの悲鳴はまさにここにある。誰のためでもない,利用者が享受するものであることを,ご理解いただきたい。

    <すぎお かつしげ 附属図書館事務部長>


    附属図書館トップ図書館紹介図書館報図書館報総目次